0. 要約

近年、DNA ミスマッチ修復機能欠損(Deficient Mismatch Repair: dMMR)した進行固形がんにおいて免疫チェックポイント阻害薬の有効性が多数報告されてきた。本邦においても臓器横断的にdMMR 固形がんに対する抗PD-1 抗体薬が承認され、臨床現場での円滑な検査・治療実践のためにはガイドラインなど参考となる手引書が必要となった。

本臨床提言には、抗PD-1/PD-L1 抗体薬の恩恵を得られる可能性が高い患者群を選別するために行われるdMMR 判定検査に関する下記の11 の要件を記述した。

  1. 1.標準的な薬物療法を実施中、または標準的な治療が困難な固形がん患者に対して、抗PD-1/PD-L1 抗体薬の適応を判断するためにdMMR 判定検査を強く推奨する。
  2. 2.MMR 機能に関わらず抗PD-1/PD-L1 抗体薬がすでに実地臨床で使用可能な切除不能固形がん患者に対し、抗PD-1/PD-L1 抗体薬の適応を判断するためにdMMR 判定検査を考慮する。
  3. 3.局所治療で根治可能な固形がん患者に対し、抗PD-1/PD-L1 抗体薬の適応を判断するためにdMMR 判定検査を推奨しない。
  4. 4.抗PD-1/PD-L1 抗体薬が既に使用された切除不能な固形がん患者に対し、再度抗PD-1/PD-L1 抗体薬の適応を判断するためにdMMR 判定検査を推奨しない。
  5. 5.すでにリンチ症候群と診断されている患者に発生した腫瘍の際、抗PD-1/PD-L1 抗体薬の適応を判断するためにdMMR 判定検査を推奨する。
  6. 6.抗PD-1/PD-L1 抗体薬の適応を判定するためのdMMR 判定検査として、MSI 検査を強く推奨する。
  7. 7.抗PD-1/PD-L1 抗体薬の適応を判定するためのdMMR 判定検査として、IHC 検査を推奨する。
  8. 8.抗PD-1/PD-L1 抗体薬の適応を判定するためのdMMR 判定検査として、分析学的妥当性が確立されたNGS 検査を推奨する。
  9. 9.dMMR 判定検査は技術及び結果の質が保証された環境の下で実施することを強く推奨する。
  10. 10.dMMR 判定検査は、遺伝診療および遺伝カウンセリング体制が整った環境の下で実施することを強く推奨する。
  11. 11.免疫チェックポイント阻害薬は、免疫関連有害事象への充分な対応が可能な環境のもと投与することを強く推奨する。

欧米では、ミスマッチ修復機能欠損に対する検査(dMMR 判定検査)として、マイクロサテライト不安定性検査、およびミスマッチ修復タンパク免疫染色が主に行われているが、近い将来、次世代シーケンス(Next-Generation Sequencing: NGS)検査にシフトしていくことが予測されている。本臨床提言は、このような将来的な動向も加味されているが、今後も刻々と進歩するがん治療ならびにdMMR を含むバイオマーカーに関する新たな知見により適時改訂されることに留意されたい。