2.3 dMMR 固形がんの臨床像

18 種類のdMMR 固形がん(5,930 のがんエクソーム)での検討では、マイクロサテライトの状態と予後との関連性は低かったと報告されている 9)。その他にも様々ながんにおいてdMMR 固形がんでの予後解析は行われているが、予後との関連性は未だ明確になっていない。

以下にdMMR 固形がんの臨床像を各がんの種類別に記載する。

2.3.1 dMMR 消化管がんの臨床像

大腸がん全体におけるdMMR の頻度は欧米では13% 10)、本邦では6–7% 11, 12)であるものの、Stage IVではその頻度は低く、本邦では1.9–3.7%とされている13, 14)。dMMR 大腸がん内でリンチ症候群が約20–30%、散発性が約70–80%を占め、ともに右側結腸に好発し低分化腺がんが多い。予後との関連については、Stage IIでは予後良好、治癒切除不能例では予後不良と報告されている。また、dMMR 大腸がんの35–43%にBRAF V600E 遺伝子変異を認めるが 15)、リンチ症候群関連大腸がんはdMMR を示しても、BRAF V600E 遺伝子変異を認めることはまれである 6)。(表3、詳細は「大腸癌治療ガイドライン」「遺伝性大腸癌診療ガイドライン」「大腸がん診療における遺伝子関連検査のガイダンス」を参照)。

胃がん全体におけるdMMR の頻度は欧米では約20–25%、アジア諸国では約8–19%と高い 16)。高齢女性に多く、遠位部の腸型腺癌が多く、リンパ節転移やTP53 変異はまれとされている 17)。MSI-H 胃がんではMSI-L / MSS 胃がんと比較し予後良好である事が報告されている(HR 0.76)18)

小腸がん全体におけるdMMR の頻度は5–45%と報告されており、比較的高頻度である 19)

食道がんについては報告が少なく、頻度や予後について定まった見解は得られていない。

表3. dMMR 大腸がんの臨床的特徴

  dMMR 大腸がんに占める割合 BRAF 変異 臨床的特徴
リンチ症候群 20-30% ほとんど検出されない 若年発症・多発性(同時・異時性)・右側結腸に好発・低分化腺がんの頻度が高い
散発性 70-80% 高頻度に認める 高齢女性・右側結腸に好発・低分化腺がんの頻度が高い

2.3.2 dMMR肝胆膵がんの臨床像

肝胆膵がんでは、dMMR を呈する頻度が少なく、まとまった報告も限られている。肝細胞がんでは、dMMR の頻度が1-3%で、進行がんのみならず、早期がんでも認められる 7)。また、悪性度が高く、再発までの期間が短いことが報告されている 20)。胆道癌では散発性のMSI-H の頻度が1.3%という報告がある 21)。若年での発症が多く 21)、早期がんや進行がんともに認められる 22)。また、MSS と比べて、予後良好との報告 23)や、予後は変わらないとの報告 22)があり、一定の見解が得られていない。

膵がんにおけるdMMR を呈する頻度は本邦から13% 24)との報告があるが、近年の海外からの報告では0.8-1.3% 25-28)であり、1%前後と考えられている。予後は良好との報告が散見され26, 27)、免疫チェックポイント阻害剤が奏効しやすい 27)と言われている。また、術後補助療法の施行群と未施行群で再発までの期間が変わらなかったという報告 29)や、低分化で、KRAS 野生型が高率であったという報告 24)もあるが、まだその真意は明らかではない。

表4. dMMR 肝胆道系腫瘍の臨床的特徴

  臨床的特徴
リンチ症候群 胆嚢癌:予後は良好
膵癌:予後は良好
散発性 肝細胞癌:悪性度が高い
胆道癌:若年発症
膵癌:予後は良好

2.3.3 dMMR婦科人がんの臨床像

婦人科においてdMMR を示すがんの種類として、子宮内膜がんが最も多く、卵巣がん・子宮頸がんにおいても認められる。一般集団の子宮内膜がんの生涯リスクは3%であるがリンチ症候群では27-71%であり 31)、一般集団の卵巣がんの生涯リスクは1.5%であるがリンチ症候群では3-20%である 31-33)。内膜がんにおいてはdMMRの頻度は20-30%、そのうちMMR遺伝子の生殖細胞系列に病的バリアントが見つかる症例が約5-20%、散発性が約80-90%である 33, 34)。リンチ症候群関連内膜がんと散発性内膜がんの臨床的特徴を比較すると表5のようになる。73 例の子宮内膜がんにおける解析では、pMMRと比較し、dMMRでは無増悪生存期間(progression-free survival: PFS)および全生存期間(overall survival: OS)が不良である傾向が認められたものの(PFS: p=0.057、OS: p=0.076)、リンチ症候群においては予後に関連性はなかった(PFS: p=0.357、OS: p=0.141)と報告されている 35)

表5. dMMR 婦人科がんの臨床的特徴

  臨床的特徴
リンチ症候群 若年発症・子宮峡部に好発・散発性内膜がんと比較して明細胞がん/漿液性がん/がん肉腫の割合が高い
散発性 低悪性度の類内膜がんが多い

2.3.4 dMMR 泌尿器がんの臨床像

泌尿器科においてdMMR を示すがんの種類として、腎盂・尿管がんが最も多く、前立腺がん・胚細胞腫瘍・膀胱がんにおいても認められる。腎盂・尿管がんにおけるdMMR の頻度は5-11.3%と報告されている 36)。dMMR を示す腎盂・尿管がんは、組織学的にはinverted growth pattern やlow stage という特徴が認められるが、腫瘍発生部位は特徴がない 37)。リンチ症候群関連腎盂・尿管がんは、一般的な腎盂・尿管がんに比し、発症年齢が若く、女性に多い 38)。また、リンチ症候群関連腎盂・尿管がんの半数以上はMSS/MSI-L であるという報告もある 38)。リンチ症候群関連腫瘍としては、腎盂・尿管がん以外には前立腺がん、胚細胞腫瘍、膀胱がんが関連する可能性が報告されている 36)。散発性dMMR泌尿器科がんの臨床的特徴は不明である。

表6. dMMR 泌尿器科がんの臨床的特徴

  臨床的特徴
リンチ症候群 腎盂・尿管がんは発症年齢が若く、女性に多い。前立腺がん、胚細胞腫瘍も関連する。
散発性 不明